森の黒熊亭 #Role Playing Guild

ウルティマオンライン飛鳥サーバーで活動するロールプレイ酒場『森の黒熊亭』の日々

『ダンジョンの管理人さん』脚本が出来るまで

2021223日、劇団アールポップにより第二回公演『ダンジョンの管理人さん』が演じられました。今回はこの脚本で意識したことや背景設定などを書いてみようかと思います。

 

*以下は演劇を見られていない方はネタバレも含みますので読まれない方が良いかもしれません。(内容も良く分からないと思います)


見られていない方で興味のある方は先に下記動画をご覧頂くことをお勧めします。

 





― 原案『デシート魔王からの招待状 Invitations from Deceit’s Undead King

『デシート魔王からの招待状 Invitations from Deceit’s Undead King』

今回の作品には原案があります。それがこの『デシート魔王からの招待状 Invitations from Deceit’s Undead King』です。

 

「黒熊亭~読書の秋2020」というギルド内で行われた文芸イベントで出展された作品ですがUO内で行われた「Treasure of Deceit」のイベントの舞台裏のような場面がユーモアたっぷりに描かれており、黒熊賞2位を含め二つの賞を受賞した傑作でした。

 

「ダンジョンの管理人さん」はこの作品にインスパイアされ、その中のアイデアをいくつか原案としてお借りしています。

 

・ダンジョンの管理をしている存在がいる(この作品では「魔王」)

・冒険者の保険金がダンジョンの資金源となる

・ダンジョンのモンスターたちは管理者の部下たち

 

具体的にはこのあたりでしょうか。

 

こちらの小説についてはBAR-chinさんのブログでも読めますのでまだの方はお勧めいたします。

 

松崎しげる子だよ~ん『デシート魔王からの招待状』

https://barchin.exblog.jp/31924354/

 

― 「コメディ」の難しさ


第二回公演は前回と違った面白さを作りたかったため、「コメディ」にすることは脚本を作り始めたときから決めていました。

 

UOでの動きは限られたものですがセリフの内容と掛け合いのタイミング、コミカルな動作などを意識しました。特に掛け合いに関しては「間」が重要なポイントですので、これはかなり練習で合わせることになりました。

 

実際の舞台での動きは劇場が出来て練習を始めてから演出担当のBAR-chinさんや演者で相談しながら決めていきました。

 

― 舞台設定とキャラクター性

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今回、場所をアイスダンジョンにしたのは、ちょうどその頃にアイスダンジョンでのイベントが開催されており、観客の共感が得られやすいと判断したからです。特にアイスダンジョンの報酬が「何か前回よりショボい…」ということ自体が面白かったので利用させて頂きました。

 

余談ですがアイスダンジョンのイベント名は「Tears of Ice Dragon」が正式でしたが演劇内では「トレジャーオブデシート」からのパクリ感をより分かりやすくするために「トレジャーオブアイス」と名称を変更しています。

 

また前回以上に意識したのは各自のキャラクター性でした。コメディはキャラクターの面白さも重要だと考えているからです。それぞれに少し抜けたような個性を持たせながら描き分けていくよう努力してみました。

 

― アイスダンジョン長官ニペ

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行動力には長けるが余り先を考えずに動くため失敗も多い主人公です。

背景設定としては父親が前任のアイスダンジョン長官で、最近父親が亡くなり長官の座を引き継いだところ、という形になります。

とにかく感情豊かな女の子という感じで作りましたが、かなり早い段階で設定も性格も完成しましたね。演じてて楽しいキャラクターでした。

 

― アイスダンジョン副官イヌイ

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ニペが感情豊かな分、どちらかというと冷静なタイプとして作りました。ツッコミ役ですがボケも兼ねています。メイスや鞭を持ったりするシーン・スライムへの変身シーン(脚本ではサーペントでした)などは練習中にPopuchinさんの発想で演じられた点で、そういう中でキャラクター性がより固定されていきました。実際に動かし始めることでキャラが固定することはよくあると思います。

背景設定としてはニペの父親の代から副官を務めており、彼女の父親には大恩があることからニペに色々言いますが実際にはニペが何をやっても付いていくであろう気概をもった副官です。

 

― Fデスパ長官ディノ

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ニペの幼馴染的な友人として作りました。口は悪いですが良い奴ですね(笑)

チャンピオンスポーンをネタにしたかったので、ダンジョンはFデスパで。キャラクターとしてはあまり悩まず出来上がった感じです。

背景設定としてはニペの父親に色々とダンジョン管理人としての仕事を学んでいたため、彼もニペの父親に恩義があります。ニペとは子供の頃からの知り合いですね。

上演時間や話の流れの都合上で削除されましたが、実は彼には兄がいて、その兄はTデスパの長官でした。しかしTデスパもあまり人気がないダンジョンだったことから現在のようなポケモンダンジョンに変更され、そのゴタゴタの中で長官の座を降り行方不明になっています。ディノがアイスダンジョンの様子を気にしてちょくちょく様子を見に来ていたり、ピンチの時に手伝おうとしたのはそういう事情があって同じような境遇にしたくないという気持ちがあったからでした。

 

― 仕事が出来るGM

 GM.png


ダンジョン管理人の上司と言えば、やはりGMでしょう! 

ということで観客の共感も得やすい存在として作りました。

背景設定としてはそれぞれのGMは色々な地域のダンジョンを管理しているのですが彼はトラメル・フェルッカのダンジョンプランを主に担当しています。特にTデスパのポケモンダンジョン化は彼のプランニングにより成功して、今も一定の人気を誇っています。

冷静な仕事人といったところですが実際は人情味もそれなりにあるタイプなのでニペたちの計画にも色々と協力してくれています。




二回目の演劇も沢山のプレイヤーの方に来て頂き、楽しい時間を過ごせました。

この場を借りて関係者の方及び観客の方々に御礼申し上げます。(^^)/


第三回はいつかあるかな?(笑)


*イラストはつむぎさんから転載許可を得てお借りしています。ありがとうございます。

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UO小説『Sin』

 久しぶりの更新。第二回飛鳥文学賞に投稿したUO小説です。読者賞を受賞。
ブログ用に再編集しました。お楽しみ頂ければ幸いです。('ω')ノ


『Sin』    著者: Gren

1.

「えっと、このイベントの規模なら賞金はこのぐらいで…」

 あたしはギルドハウスのリビングに置かれたテーブルの上でノートを前に次のギルドイベントの企画を練りながら頭を捻っていた。そんな中、玄関のドアが盛大な音を立てて開き、元気な大声がホールに響き渡る。

 

「聞いてくれよ、アイ! 今日はさ、ダスタードって場所に行ってみたんだ!

そしたらよ、でっけぇドラゴンがうじゃうじゃ寄ってきやがってさー!」

「あああ、もう! うるさいよ、ユラン!

 今、次のギルドイベントの企画を練ってんだから静かにしてよ!」

 あたしは思わず、手に持っていたペンを玄関から入ってきたばかりのユランに突き付けた。恐らく鏡を見れば、その顔は般若と化していただろう。

 

「えっ? あー…、ごめんごめん!」

「…ったく、ほんと分かってんだか!」

 悪びれもせず謝るユラン。まぁ、これもいつもの光景。

 

あたしの名前はアイ。ギルド「White Journey」のギルドマスター。で、さっきのやかましいのがユラン。あたしとはギルド設立前からの付き合いで知り合ってからは、もう1年ぐらいになるかな。一応、うちの副ギルマス。いつも遊んでばかりでギルドの仕事なんて何もしやがらないんだけど…なっ!!

 

あたしはペンを振ってユランを追い払い、また作業に戻った。追い払われたユランは、もう怒られたのを忘れたかのように二階に口笛を吹きながら上がっていった。

 

「いいのー、アイちゃん? あんなぞんざいな扱いしちゃってさー」

 テーブルの向かい側に座っていたギルメンの一人、ナナコがいつもの間延びした口調で話しかけて来た。

 

「いいの、って何が?」

「だってさー、もうすぐ結婚するんでしょ、あなたたち」

 

あたしの顔を見ながらナナコはニヤニヤと意地悪そうな笑顔を見せた。思わず赤くなった顔がバレないようにあたしは顔を逸らした。

 

「う、うるっさいなー、そんなの関係ないでしょ」

「にっひひ、結婚式まであと一週間だっけ?そんなときにギルドイベントの準備なんかしていて、

 結婚式の準備は大丈夫ー?」

 

 あたしはナナコに自信たっぷりの顔で頷いた。

 

「問題ないわよ。もう準備は完璧だから。ニュジェルムの式場も抑えたし、その後の披露宴に使う会場も友達の砦を借りれたからね」

「おおー! さすが段取り魔のアイちゃん。 良くそんな場所、貸してくれたねー」

「ふふ、日ごろの行いってやつかなー その友達はこの前、PKに襲われて全部装備を無くしちゃったからね。あたしが新しいのをプレゼントしたんだ。そのお礼だってさ」

「へ~、さすがの人徳だね~」

 

ナナコと話している間に、ギルメンたちは何人も続々とハウスに戻ってきた。わいわいと皆で話した後、ナナコと他のメンバーたちは狩りに出かけると言い、ゲートを開いた。あたしはテーブルの上の荷物を片付け、彼らを見送った後、二階に上がっていった。

 

2.

ギルドハウス、二階の一室、そこは休憩室として使っていた。三つある仮眠用ベッドのひとつに、ユランが静かに寝ている。

緑のツンツンヘアー、その下にある顔はいつもくるくると子供のように表情を変える。開いた窓からは、初夏の心地良い風が流れ込んできていた。窓辺に寄りかかって彼の表情を見ながら、あたしは一人呟いた。

 

「どうして、こんなやつ好きになっちゃったのかな」

 

ユランとの出会いは、この世界に降り立って数日ぐらい経った頃だったかな。

 

“ハーピーを狩ると大量の羽が手に入るよ!”

誰かからそう聞いて、あたしはコブトスに一人で冒険に向かった。最初はハーピーたちとどうにか戦ってられたけど、あたしはいつの間にか周りをハーピーたちに囲まれてしまっていた。そこに偶然通りかかったのがユランだった。

 

彼もまだ駆け出しの冒険者。二人で必死に戦ったけど、結局二人とも羽まみれ、傷だらけでダンジョンを飛び出すことになった。

 

「懐かしいな」

 

あたしは開いた窓から外を眺めた。青い空には白く大きなうろこ雲が浮かんでいる。

それからあたしたちは色んな場所を二人で旅をした。

色んな人に出会った。沢山の友達が出来たし、別れもあった。

集まったメンバーたちと今のギルドも作った。

どんなときもユランとは一緒だった。

 

こりゃただの腐れ縁ってやつ?

何でユランは私を選んだんだろ?

幸せそうに眠るユランの寝顔を見ても、その答えは書いていない。

 

彼が蹴飛ばしたのか床には薄手の毛布が落ちてしまっている。あたしはそれを拾い上げてユランに被せた後、音を立てないように部屋を出て、閉まった扉に声を掛けた。

 

「おやすみなさい、ユラン」

 

3.

結婚式の日まであと1週間。

あたしとユランは二人の新居をある孤島に建てた。

周りには一軒の家も建っていない、二人だけのプライベートビーチ!

たはは、こりゃ冷やかされそうだなぁ。

 

2階建ての新居は有名なデザイナー建築家に頼んで作ってもらったオシャレな逸品。

木の香りが部屋いっぱいに広がっていて、二人ともめちゃくちゃ気に入っている。

そんな新居の内装を考えていたあたしは、外で誰かがリコールインしてきた音を聞いて外に出た。そこには見知った二人のギルメンの姿があった。

 

「あ、ナナコにルーさん。やっほー!」

ルーさんはWhite Journey設立のときのメンバーでギルドの古株の一人。

とっても頼りになるギルドのまとめ役だ。

 

「やぁ、アイ。ちょっと話したいことがあんだけど良いかな?」

「うん、もちろん。まぁ、中で話そうよ、散らかってるけどさー、あはは」

「うん」

何やら複雑そうな顔をしているルーさんが気になったけど、よく見るとナナコもいつもの明るい顔がどこへ行ったのか暗い表情をしている。あの元気っ子がどうしたんだろう?

 

二人を家に入れ、あたしはまだ荷物の散らかっている室内に三人が座れるように椅子とテーブルを準備した。

 

正直、二人の表情からするとあんまりいい話じゃなさそうだ。

もしかするとギルドを抜けるとか・・・そういう話かな?

ちょっと話を聞くのが怖い気もするけど、あたしが話の口火を切ることにした。

 

「それで? 話ってなに?」

「ああ、今日は確かユランはいないんだっけ?」

「うん、夜までは帰らないと思うよー」

「そっか」

ルーさんはナナコの方を見て、話し始めるのを促すように頷いた。

 

「あのね、アイちゃん。すっごい話しづらいことなんだけどー・・・」

 

 ああ、やっぱりギルドを抜けるって事かな。

 何もわざわざ結婚式前に言わなくってもいいのになぁ。

 

「ユランとの結婚をやめて欲しいの」

 

 予想していた言葉とのあまりの違いに、息が止まりそうになった。

 えっ、結婚をやめろ?

 

「ど、どういうこと? なんで!?」

慌てたあたしはナナコの方に詰め寄った。

 

「そ、それはさー・・・」

 

口ごもったナナコの隣でルーさんが口を開いた。

 

「あのさ、アイ。ユランとは長い付き合いだよな?

 でも気付いてなかったんだよな?」

「気づいてなかったって何が? 言ってる意味わかんないよ!」

 

ルーさんは苦々しい顔をしながら話していた。

 

「この前、俺はユランが、ある家に入っていくのを見た。俺たちが知らない家だったから興味があっ 

 てちょっと窓から覗いてみた。そこであいつはいつもとは違う服に着替え、その家からまたどこか   

 へ出ていったんだ」

「そ、それが何よ。そりゃユランだって着替えたりするでしょ?」

「問題はその恰好さ。その恰好は… ランドそのものだったんだ」

 その名前を聞いてあたしは驚愕の表情を浮かべた。

 

PKのランド。それは何年も前から、ここブリタニアで有名なPK。

たちが悪い性格で何度も同じ相手を狙ったり、執拗に追い回したり、罵声を浴びせたりしては喜んでいる最低なやつ。中にはそいつに狙われ過ぎて、この世界から去ってしまった人も沢山いる。私にも一人、そんな友達がいたのを今も覚えている。

 

「…嘘でしょ!!」

「嘘じゃない。俺は間違いなく見たんだ」

ルーさんはこんな嘘をつくような人じゃない。そんなことは長い付き合いで知っている。

しばらく沈黙が流れた後、それを遮るようにナナコが話し始めた。

 

「・・・あのさ、アイちゃん。アイちゃんがギルマスのこのギルド、あたしたちはみんな好きだよ。 

 でもさ、ユランは、正直ちょっと怖い。いつも何考えているか分からないところあるしさ。

 副ギルマスっていうのも、それって結局アイちゃんと付き合いが長いから、まぁいいかって思って

 るだけ」

 あたしはナナコの話を黙って聞いていた。

 

「もしユランが本当にあのランドなら、あたしはこのギルドを抜けるよ。

 いや、みんな抜けると思う。それでもいい?」

「俺も同じ意見だ」

 

あたしは声が出せなかった。カラカラに乾いた喉がひりつく。

 

「あたしが聞いてみる・・・、だからちょっとだけ待って・・・」

そう言うのがやっとだった。

 

「うん、お願いね」

「よろしく。信じてるぜ、アイ」

そう言って二人は家を出ていった。

 

夕焼けの日が、窓から差し込みはじめた。あたしは椅子から立ち上がれなかった。

二人の言葉がくるくると頭の中を回り続けていた。

 

4

夜遅く、ユランが家に戻ってきた。

 

「おーい、聞いてくれ!! すっげー面白い場所を見つけたんだ!

 普通は入れない場所らしくってさ、ルーンをもらったから今度行ってみようぜ!」

いつもと変わらぬ笑顔のユランにあたしはわずかな望みをかけながら聞いた。

 

「ねぇ、ユラン。あなたってランドなの・・・?」

ただ、こう尋ねるのがあたしに出来る精一杯だった。

 

「ん? ああ、そうだよー。誰から聞いたの?」

ユランはにっこりとあたしに笑いかけた。いつものように悪びれもせず。

 

「そうだ・・・って、あなたが本当にあのPKのランドなの!?」

「うん」

 周りの世界がボロボロと崩れ落ちたように感じ、あたしの視界は涙で歪み始めた。

 

「どうして・・・どうして秘密にしてたの!? 何で言ってくれなかったの!」

「えーっと、それは・・・」

 困ったようにユランは苦笑いをしながら頬に指を当てている。

そんな表情にあたしはもう耐えられなかった。

 

「出て行って、今すぐ、ここから!」

「・・・」

「最低だよ! ユラン!

 もう二度とあたしの前に現れないで!」

 

I ban thee

 

 その言葉と一緒に、ユランの姿は消えた。

 あたしは床に崩れ落ち、一晩中泣き明かした。

 

5.

あれから1か月が過ぎた。ユランとの式は無くなり、あたしは新しい生活を始めていた。

ギルドにはユランの名前はもうない。ギルドの活動も変わらず続いている。

ずっと企画していたイベントも来週にまで迫ってきている。

 

そんなある夜、あたしは一人家の中でイベントの企画書のチェックをしていた。

 

コトン

 

家の外で鳴った物音を聞き、あたしは家の外へ出た。家の周りを見渡したが、誰もいない。

外は心地良い夜風が流れていた。

 

「あんたがアイさん?」

急に後ろから掛けられた声に驚き、あたしは声のした方を振り向いた。

そこには血だらけのマントに巨大なハルバードを持った男が立っていた。顔はこれも血がこびりついたプレートヘルムを被っており見えない。

 

「だ、だ、誰!?」

「あー…、俺はギリアンって言うんだ。実はあんたと話したいことがあってな。

 わりーんだけど、ちょいと立ち話もなんだから中に入れてくれねーか?」

「どう見ても悪人にしか見えない人を家に入れるわけないでしょ!」

「・・・わははは! そりゃそうか!

 んー、じゃあ、これでどうだ?

ランド・・・、いやユランのことで話がある」

「ユラン・・・?」

「ああ」

 

結局あたしは警戒しながらもギリアンという男を家の中に入れることにした。部屋の中で兜を脱い だ彼の顔は傷だらけだったが思いのほか若い端正な顔立ちだった。

 

「それで・・・ユランのことって何なの?」

「ああ、俺はあんたとあいつが知り合う、ずっと前からガキの頃からの付き合いでな、ユランの相棒

 だった」

「相棒…? じゃあ、あなたもPKなのね!」

 

あたしはテーブルに置いてあったナイフを拾って身構えたが、彼は何もしないというジェスチャーなのか両手をすっと上げた。

 

「待て待て、何もしねーよ。

 今日はさ、あんたにユランのことで伝えたいことがあって訪ねて来たんだ」

「伝えたいことって何よ・・・?」

警戒してナイフを離さないあたしに苦笑しながらギリアンは話を続けた。

 

「あんたさ、ユランと結婚しようと思ってたんだよな?

でもあいつはお前さんに自分がPKだってことを言ってなかった。

それをあんたが怒った。間違いないよな?」

「・・・ええ、そうよ!

 あいつがそんな最低なやつなんて!

 知っていたら結婚どころか友達だってもっと早くにやめていたわ!!」

 ナイフを握った手に力がこもる。

 

「そうだなぁ。あいつは確かに最低なやつだ。

 俺たちPKの中でもやり過ぎだって嫌われてるしなぁ。

 実際、ガキの頃からあいつと付き合っているのは俺くらいなもんだ」

 ギリアンはまるで動揺したそぶりも見せずに、腰に付けていた酒瓶を口元に持っていき、ゴクリと一口飲んだ。

 

「あいつさ、あんたが怒ったとき、どういう反応だった?」

「・・・いつも通りよ、へらへらと悪びれもしてなかったわ」

「はは、だろうな。あいつ、何が良いことで何が悪いことかの区別がつかねーんだよ」

「えっ?」

私が聞き返したとき、ギリアンは少し寂しそうな顔をしていた。

 

「PKとかやっていると、たまに会うんだけどさ。世の中には善悪の区別がつかないってやつらがい  

 る。そいつらは人をぶっ殺すことも、その辺の街中のゴミを拾って綺麗にするのも同じようなこと 

 に感じちまうんだとよ」

 あたしは黙ってギリアンの話を聞いていた。心は何故か落ち着いてきていた。彼に向けていたナイフは気づけばもう降ろしていた。

 

「でもな、不思議なんだが、ユランのやつは善悪の区別は出来ねーくせに、それが分からない自分は   

 おかしい人間だってことは自覚してやがるんだ。そして、そのことにガキの頃から苦しんでいる」

 何を言っても何も言わず苦笑いをしていたユランの顔が浮かんでは消えていく。その度に心が締め付けられるように痛む。

 

「あんたとの結婚が無くなった後、ユランは俺に言っていたよ。言わないでも別に良いと思っていた自分が悪いんだよってな」

「・・・」

「分かってる。あんたが正しいと俺は思ってる。

 あいつは最低なやつだってことも否定はしない。

 ただ、何となくお前さんにはそのことを知っといてもらいたかったんだ」

 そう言ってギリアンは椅子から立ち上がった。

 

喉から絞り出すように、あたしはギリアンに尋ねた。

「あなたは・・・どうしてユランとずっと友達でいられるの?」

 ギリアンはにっこりと笑い、何も言わずリコールの魔法を唱え、姿を消した。

 

ギリアンが立ち去ってからどのぐらい経ったんだろうか。

あたしは外に出て空を見上げた。夜空の星はぼんやりと明るく瞬いていた。

 

6.

気付けばあたしの足はコブトスに向かっていた。暗闇の中、あちらこちらから炎が吹き上がっている。あたしがユランと出会ったのは、このダンジョンだった。あれから何度も何度も彼と話してきた。でもあたしはユランのことをどのぐらい知っていたのかな。

 

ユランはあたしと一緒にいるとき、ずっと自分が間違ったことをしてるんじゃないかって不安に思ってたのかな。でもそれをあたしには言えなかったのかな。

 

また心が締め付けられるように痛む。あのとき、あたしが家から追い出したときのユランの顔が忘れられない。困ったような、でも、どこか諦めたような。

 

炎の熱気があたしの周りを満たしていき、あたしは地面に倒れた。意識がぼんやりとしてくる。

 

 あたしはユランとのことを思い出していた。

 二人の、二人だけの思い出。

 

 彼の声や笑顔が頭の中で蘇る。

 

 あぁ、そうだ。

 やっぱりあたしはユランのことが、ただ好きなんだ。理由なんかなく。

  

「もう少し早く思い出せたら良かったなぁ…」

 

 ごめん、ユラン。

 薄れてゆく意識の中、あたしはゆっくり目をつぶった。

 誰かがあたしの身体を抱き抱える、そんな気がした。

 

7.

あれからまた1年が過ぎた。孤島の小さな家にあたしは住んでいる。

ギルドWhite Journey は解散した。

ナナコやルーさんが何をしているか、それはもう分からない。

あたしは色んなものを失った。

 

家の扉が開き、ツンツン頭のいつもの笑顔が顔を出す。

「聞いてくれよ、アイ! 今日はさ!」

 その笑顔にあたしも笑顔で応える。

 

 後悔はない。

 あたしはこの人と生きていくって決めたから。

 

 大丈夫。

 あたしは笑えている。

 彼を許した自分の罪は、暖かい心が覆ってくれているから。

 

 (完)


 Sin = (宗教、道徳上の)罪、罪業


《あとがき》


 この『Sin』というタイトルをどう解釈するかはもちろん読んだ方の自由ですが、どういう意図で付けたのかというのをあとがきで呟いておきます。


 この物語は主人公の少女が善悪・倫理観と源泉のような感情との間での選択を迫られるというストーリーが主軸ですが、題名の『Sin』は少女の話だけでなく罪とは何か、罪深いのは誰かという意図で付けています。というのは、この物語に出てくる全ての登場人物は見方によっては全員が何らかの罪を持っていると考えているからです。少女の婚約者であるユランは一般的な価値観では悪な存在であり、罪深い人物です。ただ彼は気質的に自身の日々の行為が罪だとは感じていません。彼は極端な例と言えますが、価値観、倫理観次第で、一つの物事が罪と感じるか罪でないと感じるかは変わるものだと思います。微妙にその幅は人によってずれることから「絶対的な罪」というものはないと言えばないのでしょう。


 社会というものが存在せず、仮に個々がばらばらに生活していた場合、個々の価値観が唯一の価値観となるため「罪」というものは存在しないのではないかと考えたりします。しかし社会が形成されたときには大多数の母集団に当てはまる「価値観」や「倫理観」の基準が形成され、そこから逸脱した行為が一般的な「罪」になるのではないかと思います。


 自分の中の善悪と相反する行為を選択した主人公の少女は恐らく作品中で唯一、自身に明確な「罪」を感じています。しかし彼女の行為は客観的に見た場合には罪なのでしょうか?一般的な感覚で言えば自身の感情を優先した少女は罪深い存在ではないように感じるかもしれませんし、共感する方もいるかもしれません。彼女自身は罪を感じているのに周りは罪とは思わない。では罪とは誰が決めるのか。そんな疑問をテーマにさせて頂きました。


最後までお読みいただきありがとうございました。


劇団アールポップ第二回公演『ダンジョンの管理人さん』2021年2月23日(祝・火)

飛鳥で活動している劇団アールポップの第二回公演のお知らせです。


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劇団アールポップは20205月にPopuchin氏(第16期ニューマジンシア首長)と飛鳥のギルド #RPGを中心にしたメンバーで旗揚げされたUO劇団です。


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ポスター(ダンジョン管理人 

Illustration by Tsumugi

第二回公演

『ダンジョンの管理人さん』


凶暴なドラゴンたちが闊歩する洞窟、ダスタード・・・

巨大な地下世界、アンダーワールド・・・

魔女ミナクスたちとの激しい戦いが待ち受ける、シャドウガード・・・

 

そんな数多くのダンジョンにはそれらを治める『管理人』という仕事があるのをあなたはご存知でしょうか?

 

氷雪に覆われ、凍てつく空気が流れる洞窟、アイスダンジョン

そこでは先日、ニペという女性が父の後を継ぎ、新しい『管理人』となりました

 

さて、彼女は今夜、どのような物語を私たちに見せてくれるのでしょうか


○予定時間:受付 2130 開演 2200

○シャード:飛鳥

○ファセット:トランメル

○実施場所:マジンシア ムーンゲートより東

      劇場 飛鳥ムーラン・ルージュ

      場所はこちらのホームページをご参照下さい。  


【注意事項】

     上演時間は40分ほどの予定です

     グローバルチャットは「RPOP」チャンネルへお入りください

     上演中は私語、魔法の詠唱、舞台への移動はお控え下さい(*演劇への支障を来すと主催者側が判断した場合はBANします)

     上演中、やむを得ず退出される場合は自分をシングルクリックし、「家から出る」を選択してください。

     オプションのゲーム画面サイズは舞台全体が見えるように調整してください。(*最大の1280×720にすることをお勧めします)

     発言表示時間は100程度にしておいて頂くことをお勧めします

     途中入室は出来るだけ静かにお入りください

 

『A Letter~1枚の手紙~』脚本が出来るまで

めちゃくちゃ久しぶりのブログ更新です。


去る2020年の8月、劇団アールポップによる演劇「A Letter1枚の手紙~」の公演があり、その際に脚本/演出/司会を担当させて頂きました。

 

普段はギルド内でシナリオのあるロールプレイイベントを行っているため、『物語を作る』というのは良くしていますが「舞台の脚本」という形は初めてでした。その中で意識したことなどを今回は書いてみようかと思います。

 

*以下は演劇を見られていない方は、ネタバレも含みますので読まれない方が良いかもしれません。(内容もよく分からないと思います)


見られていない方で興味のある方は先に下記動画をご覧頂くことをお勧めします。



 



― 決められた制約

 

まず前提として、以下のような制約からスタートしました。

 

・公演時間は30分程度の短編劇

・登場人物は4~5人まで

・場面転換はなし(セットはそのまま)

 

初めて行う演劇ということもあり、練習時間なども考えると短編劇がまずは良いだろうと考えました。また出演希望も45人程度であったためそれに合わせた人数を。場面転換も出来るだけ煩雑さを無くすために行わないようにしました。

 

― 「分かりやすさ」の重視

 

付けくわえて重視したのは「分かりやすさ」です。本と違って読み返すことは出来ず、観客が途中で質問をすることも出来ないのが観劇です。見終わった後に「話が分からなかった」というのは見にきてくれた人にとって申し訳ないものです。とにかく話が分かりにくいような複雑すぎる構成、良く噛み砕かないと分からない台詞、話の流れが速すぎて感情移入できない・分からない、といったことがないかを出来るだけ推敲しました。


幸いにもストーリーが分からないという感想はあまりなかったため、ホッとしています。

 

― 「酒場」という設定、そして「NPC感」

 

場面に関しては「酒場」という設定を使いました。これは普段、黒熊亭という酒場でのRPを行うことが多いことからイメージを湧かせやすいのがあります。またバーマスターは私のメインキャラクターであるグレン(黒熊亭の店主)と同じ格好をさせています。グレンを知らない人にはあまり効果はないですが「酒場」「グレンのようなバーマスター」「無言」にすることで物語と関係がない、背景の一部のようなNPC感を強調し、彼女が物語のキーキャラクターであることに気づかれにくいように企みました。ジェマが雌であるにもかかわらず、男性の姿に変えたのもその一環です。

 

― 3人の冒険者たちが貰う手紙

 

マーゴットの初恋の相手からの手紙。

エリックのかつての「相棒ジェマ」からの手紙。

この2つについては早い段階で決定。

 

アルに関しては少し悩みました。当初は「神様」からの手紙、という設定を考えていましたがブリタニアにはそれらしい神教がありません。地球人であるアバタールという設定自体はあるので、そちらから神という概念を持ってくることも可能ですが、出来ればブリタニア出身にしたかったため、最終的には「ロード・ブリティッシュ」からの手紙という形に落ち着きました。

 

― 謎の女性シャーリーン

 

ペットの死神であるシャーリーン。

このキャラクターは道化のようなおどけた喋り方と、ジェマとの会話や登場時のような落ち着いた喋り方の2つの口調を持っています。シャーリーンの本来の喋り方は後者です。前者はあくまで彼女が今回行った「演技の口調」です。

 

宝箱から飛び出した不可思議な存在が不可思議な喋り方をすることで、酒場の中にいる冒険者たちと比べてシャーリーンは異分子な存在です。異分子のような存在だからこそ不可思議な魔法を使っても、それが受け入れられるような印象を作れればと思いました。(タイプ的には「アラジン」に出てくるランプの精霊ジーニーのようなポジションでしょうか)

 

また最後に喋り方を変えることで、ギャップを作り、「道化者」のような存在から「死神」という一つの厳かな存在に切り替えることを意識しています。



 

大体、脚本作成に当たって考えたことは上記のようなことでしょうか。

 

劇団アールポップは第二回の公演に向けて現在、準備中です。

冬の公演を予定していますが何だかんだで春になるような気もします。

 

また足を運んで下さる方々をお待ちしております。

『MMORPG内でのロールプレイにおける世界観の共通認識』

*こちらのカテゴリーでは私の個人的な経験・知識によるロールプレイへの思いや考えを書いています。記載の仕方が押し付けのように感じるかもしれませんが、あくまで一つの意見として軽い気持ちでお受け取り頂ければ幸いです。

 

MMORPG内でのロールプレイにおける世界観の共通認識』

 

MMORPGでロールプレイを行うとき「世界観の共通認識」は重要なことになりますが中々難しいことのようにも感じています。

 

私が過去に経験したロールプレイの場では「ゲーム的な数値・用語」というものは余り使わないようにしようというのがルールとしてありました。(どちらかというと一般的なルールかと思います。)

 

例えば、下記のような形です。

 

Mageryのスキルがようやく100になったよ」

INTSTRの数値のバランスに悩む」

「今のスキル構成はSSTacticsHealing…」

「この剣のダメージは13-19で…」

 

上記のような会話はいかにもゲーム的な会話になります。なのでロールプレイをするときはそういったスキル名や数値といったものはあまり使わないようにしています。

 

これは私が昔から持っていた「MMORPGにおけるロールプレイのお作法」とも言うべき考え方であったのですが、最近はいろんな考え方があるのではないかと思っています。

 

近年、比較的良くみられる形として「ステータス」「スキル」などをそのままゲーム的に描いている漫画やアニメは多くみられます。(例:『盾の勇者の成り上がり』等)

 

違和感があるかというと意外とそうでもなく、ゲーム的なものがあたかも普通にあるような世界観に設定されているからだと考えています。

 

一般的にそういった漫画で多い形式は「異世界転生もの」だと思いますがMMORPGでロールプレイをするのは、その世界に飛び込んだ感覚ともいえるので、それに近いのではないかと思います。

 

そのため、「ゲームのような世界」を普段からイメージしていると、上記で記載したようなゲーム的な会話をすることも余り違和感がありません。スキルツリーやステータス画面はプレイヤー自身が体験しているものでもあるため、そういった数値的な会話をする方がむしろ普通だと感じる方すらいるかもしれません。

 

「いやいや、ちゃんとブリタニアで生活しているNPCたちのように振舞うのが正解だろう!彼らの世界にはそんなゲーム的な要素はなく、もっと中世ヨーロッパ風の魔法と剣の世界だ!」

と反論したくなる気持ちもあるのですが、ゲーム内では下記のようなNPCとの会話もあります。

 

 世界観


このクエストの依頼はいかにもNPCが発言しているような形式で綴られていますが内容はInscription、スキル、50などなど…ゲーム的な用語でいっぱいです。

 

ちょっと見方を変えてみると、もしかしたらブリタニアの世界では私たちがゲーム画面で見ているようなステータス画面、スキルツリーなどを自分の前にポンっとポップアップさせて確認出来るのかもしれません。そういう世界観の認識でロールプレイをするのもまた一つの面白い形と言えます。

 

かといって、世界観に関してお互いの共通認識が余りにもずれた状態で一緒にロールプレイをするというのは面白くはありません。

 

現状では#RPGGMとしては当初より考えているように「ゲーム的な数値・用語」は出来るだけ無くした形でのロールプレイをギルドの共通認識としていきたいと考えていますが、自分の考え方が全てではないという一例として挙げさせていただきました。